テーブルサイドにワゴンを運び目の前で作る、フレンチのクラシックなデザートです。
お店では伝統的なレシピを私流に少しアレンジをしてお出ししています。
最近ではこれがメニューにあるお店もあまり見かけなくなりましたが、残していきたい一品です。
オレンジを螺旋状に切ってコニャックを上から垂らして火をつける演出がよく知られていますが、私はそうせずに、シュゼットパンの中でフレッシュさや香りを組み立てていきます。
カラメライズした砂糖の香ばしさと甘味、バターのコク、レモンの酸味、オレンジのフレッシュさ、グランマニエの風味と苦味、コアントローのシャープさ、コニャックの風味を重ねていき、重層的な美味しさを作ります。
クレープ生地を作るときは、溶き卵と牛乳をひとつの液体と考えます。
別々に小麦粉に入れてその都度混ぜると、水分量が足りないので練ってしまうことになります。
そうするとグルテンが出てしまい、目指しているパリッとして伸びやかなクレープ生地にはなりません。
そうならないよう、卵と牛乳は先に合わせて液体の量を増やし、小麦粉に混ぜます。
小麦粉と液体(卵と牛乳)をどう合わせればどういう感じでグルテンができて、どういうタイプの生地になるかということを理解すれば、ひとつひとつのレシピをバラバラに覚えなくても、いろいろと応用をきかせることができるようになります。
料理のレシピをひとつひとつ紐解こうと思うと、それはとても大変なことです。
例えばクレープを作るときに小麦粉や卵の性質をきちんと知ることで、小麦粉と卵を使う他の料理やデザートでのその役割や混ぜ方の違いなどを理解できるようになります。
ひとつのメニューを見て、そこで使う材料を理解すると、その材料を使っている別のメニューも作れるようになっていきます。
それが、料理を覚えていくということだと思っています。